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血管平滑筋と血管弛緩試験

●食品機能研究ニューズ(06年3月号)

●2006年3月22日発行 【第18号】

3月に入りめっきり春らしい天気になってきましたが、皆様お元気でお過ごしでしょうか。今回も、機能性食品の有効性評価に関する研究の情報と話題を皆様に分かり易く解説して配信いたします。

今回のメールマガジンでは、血管平滑筋に関連した話題と当社で実施しました摘出血管標本を使った血管弛緩物質の作用機序検討試験の結果を総説形式にまとめてご紹介をいたします。このマガジンが血圧降下、血管拡張、血流改善などの作用を示す機能性食品や医薬品の研究開発のご参考になれば幸いです。

1. はじめに

1.1 概要

血管の収縮と弛緩は血管平滑筋細胞により制御されています。平滑筋細胞は収縮能を持ち、化学エネルギーを機械エネルギーに変換しています。外部からのシグナルが平滑筋細胞の中でどのように伝達、変換され、収縮および弛緩を引き起こすかの研究が進んでいます。また、血管の内面を覆う一層の膜である内皮細胞と平滑筋細胞が相互にコントロールする機序が解明されてきました(児玉ら、1997)。

1.2 血管平滑筋細胞の構造

血管壁は内膜、中膜、外膜の3層構造を示しています。正常な動脈壁において、平滑筋細胞は中膜を、また血管内皮細胞は内膜をそれぞれ構成しています。血管平滑筋細胞は心筋細胞や骨格筋細胞と異なり、以下に示す特徴があります。

平滑筋細胞は紡錘型の細胞で楕円形の核を1つ持つ単核細胞です。平滑筋細胞の筋原線維は長軸方向だけでなくさまざまな方向を向いて、3次元的な収縮を可能にしています。また、細胞間隙にはコラーゲンおよびラミニンが発現しており、平滑筋細胞同士を結合させる構造となっています(児玉ら、1997)。

1.3 血管平滑筋細胞と疾患

血管生物学の研究の進歩により、高血圧、血栓症、動脈硬化、再狭窄などの血管疾患において、分子レベルでそれらの病態生理が明らかにされつつあります。特に、血管の収縮、弛緩と密接に関連した疾患である高血圧、狭心症および脳血管障害などにおける血管平滑筋の研究は重要です。

2. 収縮と弛緩の制御

2.1 自律神経による制御

血圧は心臓の拍出量と末梢血流抵抗の積におおむね比例するため、血流の抵抗を受ける血管(抵抗血管)の収縮制御は血圧の維持と調節に重要です。この血管の収縮と弛緩は自律神経(交感神経と副交感神経)に制御されています。交感神経が血管を収縮させる方向に働き、副交感神経が血管を弛緩させる方向に働きます。

交感神経の節後線維(神経節でニューロンが交代した後の線維)はアドレナリン作動性線維であり、血管平滑筋の緊張度を保つため絶えずインパルスを発生させています。インパルス頻度が増加すると節後線維からのノルアドレナリン放出が増加して血管が収縮し、逆にインパルス頻度が減少すればノルアドレナリン放出が減少して血管は弛緩します。

2.2 細胞内カルシウム濃度による制御

細胞内外には1万倍のカルシウム濃度差があり、この濃度差によって細胞外から細胞内にカルシウムが流入し、複雑な経路を経て最終的に血管平滑筋は収縮します。カルシウムの流入経路には、①膜電位依存性カルシウムチャネル、②受容体作動性カルシウムチャネル、③その他のチャネルなどがあります(唐木、1986;1991)。以下、表1に各種カルシウムチャネルの説明をします。

表1 カルシウムチャネルの種類とカルシウム流入経路
カルシウムチャネル カルシウム流入経路
膜電位依存性 平滑筋の静止電位は他の細胞と同様に細胞外に比べて負の電位(−40~−70mV)を持っています。脱分極(正方向の膜電位)により電位依存性カルシウムチャネルが開口して、細胞外から細胞内にカルシウムが流入し、細胞内カルシウム濃度が上昇し平滑筋が収縮します。高濃度のKClは平滑筋を脱分極させ、この作用はカルシウムブロッカー(ジヒドロピリジン系)で遮断されます(唐木、1986;1991)。
受容体作動性 この型のカルシウムチャネルでは各種作動薬が受容体に結合して直接カルシウムチャネルを開口させると考えられていますが、分子レベルではまだ不明な点が多いです。例えば、ノルアドレナリンは平滑筋細胞のα受容体を介して細胞内カルシウムの貯蔵部位からの放出と細胞外からのカルシウム流入を引き起こし、平滑筋を収縮させます(唐木、1986;1991)。
その他 カルシウムストアが枯渇すると開口するカルシウムストア共役型カルシウムチャネル、細胞膜の機械的刺激によって開口する機械受容カルシウムチャネルなどが報告されていますが、不明な点が多いです。

2.3 血管内皮細胞による制御

血管平滑筋は内皮細胞から遊離される各種の収縮物質、弛緩物質により制御されています。エンドセリンは内皮細胞が分泌する強力な収縮因子でET-1、ET-2、ET-3の3種類のアイソフォームがあります。一方、弛緩物質には内皮細胞由来血管弛緩因子(EDRF)が知られており、EDRFの本体は一酸化窒素(NO)であることが分かりました(児玉ら、1997)。

内因性の弛緩物質であるブラジキニン、ヒスタミン、アセチルコリン、サブスタンスP、アデニンなどはNOの放出を介して血管を弛緩させることが知られています。NOは細胞内でNO合成酵素を介してL-アルギンから合成され、種々の経路を経てグアニル酸シクラーゼの活性化を起こし、結果的に細胞内サイクリックGMPの上昇により血管を弛緩させます。

3. 血管弛緩作用の機序検討試験

3.1 目的

マグヌス装置を用いて摘出臓器の張力変化を調べる実験は古くから行われています。特に、摘出血管を用いたマグヌス法による実験は血管弛緩物質の作用機序を調べる方法としてよく使われています。ここでは、実験装置を含めた簡単な実験方法の説明をいたします。また、血管弛緩物質の例を示して各種の弛緩様式を説明いたします。

3.2 実験材料と方法の概要

実験装置を図1および2に示しました。ラット(またはモルモット)の胸部大動脈を摘出し切開して螺旋状標本を作製しました。この標本を生理的栄養液(37℃、95%O2-5%CO2混合ガス飽和)を満たしたマグヌス装置に懸垂し、その収縮力をトランスデューサを介して圧アンプで増幅後、レコーダに記録しました。実験には内皮細胞を剥離した標本と保存した標本を用いました。

figure1
図1 マグヌス槽とトランスデューサ

3.3 血管弛緩の様式

1) 内皮依存性弛緩

抗腫瘍性抗生物質であるピラルビシンは静脈内投与で血圧降下を示しますが、その機序が分かりませんでした。そこで、私達はラット胸部大動脈標本の内皮除去標本と内皮保存標本でピラルビシンの血管弛緩作用を比較した結果、ピラルビシンは内皮保存標本でのみ強い弛緩作用を示しました(Hirano et al, 1991a)。

figure2
図2 血管の収縮力測定のための実験装置

次に、このピラルビシンの内皮依存性血管弛緩作用の機序を検討するため、メチレンブルー(グアニル酸シクラーゼ阻害薬)、ヒドロキノンおよびフェニドン(抗酸化剤およびラジカルスカベンジャー)、ヘモグロビン(EDRF吸着タンパク)、p-ブロモフェナシルブロマイド(ホスホリパーゼA2阻害薬)ならびにNG-ニトロ-L-アルギニン(NO合成阻害薬)を併用した結果、ピラルビシンの内皮依存性血管弛緩作用は完全に抑制され、インドメタシン(シクロオキシゲナーゼ阻害薬)の併用では抑制されませんでした(Hirano et al, 1991b)。

また、育毛剤カロヤンの主成分である塩化カルプロニウムはアセチルコリンの誘導体ですが、血管拡張作用の機序が分かりませんでした。そこで、私達はピラルビシンの場合と同様にラット胸部大動脈標本の内皮除去標本と内皮保存標本で塩化カルプロニウムの血管弛緩作用を比較した結果、塩化カルプロニウムは内皮保存標本でのみ強い弛緩作用を示しました。同様に、メチレンブルーの併用またはNO合成阻害薬NG-ニトロ-L-アルギニンメチルエステルの併用で塩化カルプロニウムの弛緩作用は完全に抑制されました(平野ら, 2004)。

これらの結果から、ピラルビシンおよび塩化カルプロニウムの血管弛緩作用は内皮依存性であり、その本体は内皮細胞から遊離されたNOを介した作用であることが分かりました。

2) 受容体刺激による収縮の抑制とアンジオテンシン変換酵素阻害

カツオ節由来のペプチドはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作用を持ち、このACE阻害作用がカツオ節由来ペプチドの血圧降下作用の本体であると考えられていました。私達は、カツオ節抽出物(ペプチドに消化していない)のラット胸部大動脈標本の内皮除去標本に対する作用を詳細に検討した結果、カツオ節抽出物はKClで誘発した収縮よりもノルアドレナリンで誘発した収縮を強く抑制させました。一方、摘出血管標本にアンジオテンシンⅠを添加するとACEによりアンジオテンシンⅠからアンジオテンシンⅡが生合成されて血管が収縮します。この方法を使ってカツオ節抽出物のACE阻害作用を調べた結果、カツオ節抽出物はアンジオテンシンⅠで誘発した収縮を軽度に抑制させました(Kouno, Hirano et al, 2005)。

カツオ節抽出物のノルアドレナリン収縮に対する抑制作用がアンジオテンシンⅠ収縮に対する抑制作用より強いことから、カツオ節抽出物はACE阻害作用の他に新しい知見として血管平滑筋に対する直接作用、すなわちα受容体刺激に関連した血管収縮を抑制する作用を併せ持つことが分かりました(Kouno, Hirano et al, 2005)。

3) 膜電位依存性収縮の抑制

動物用抗生物質であるチアムリンは血圧降下を示しますが、ピラルビシンの場合と同様にその機序が分かりませんでした。そこで、私達はモルモットの摘出胸部大動脈標本に対するチアムリンの作用を詳細に検討しました。

その結果、チアムリンは脱分極させたKCl収縮標本を非常に強く抑制させました。また、チアムリンはKCl脱分極標本においてカルシウムフリー栄養液中にカルシウムを累積的に添加して誘発させた収縮(カルシウム誘発性収縮)を抑制しました。さらに、KCl収縮標本においてチアムリンの弛緩作用と同時に細胞内カルシウム濃度変化を蛍光指示薬fura 2 AMで測定した結果、弛緩に伴う細胞内カルシウムレベルの減少がみられました(Nakajyo, Hirano et al, 1992)。

これらの結果から、チアムリンのKCl収縮標本における抑制作用の機序は膜電位依存性カルシウムチャネルを介したカルシウム流入の抑制であると考えられました(Nakajyo, Hirano et al,1992)。

参考文献

児玉 龍彦、高橋 潔、渋谷 正史(1997):第1章 血管の細胞の分子生物学、血管生物学、p1-49、講談社、東京

唐木 英明(1986):Ⅱ-6 興奮収縮連関、Ⅱ平滑筋の形態と機能、平滑筋の薬物反応(浦川 紀元 監修)、p90-110、文永堂出版、東京

唐木 英明(1991):Ⅵ 平滑筋収縮のカルシウムとセカンドメッセンジャーによる修飾、カルシウムと情報伝達系(浦川 紀元、唐木 英明 編集)、p99-118、文永堂出版、東京

Hirano S, Agata N, Hara Y, Iguchi H, Shirai M, Tone H and Urakawa N (1991a) : Effects of pirarubicin, an antitumor antibiotic, on the cardiovascular system, Cancer Chemother Pharmacol, 28: 266-272.

Hirano S, Agata N, Hara Y, Iguchi H, Shirai M, Tone H and Urakawa N (1991b) : Pirarubicin-induced endothelium-dependent relaxation in rat isolated aorta, J Pharm Pharmacol, 43: 848-854.

平野 伸一、開発 啓之、角田 健司(2004):塩化カルプロニウムのラット摘出大動脈標本に対する内皮依存性血管弛緩作用—弛緩反応における一酸化窒素(NO)の役割—、応用薬理、66: 167-174.

Kouno K, Hirano S, Kuboki H, Kasai M and Hatae K (2005) : Effect of dried bonito (Katsuobushi) and captopril, an angiotensin Ⅰ-converting enzyme inhibitor, on rat isolated aorta : a possible mechanism of antihypertensive action, Biosci Biotechnol Biochem, 69: 911-915.

Nakajyo S, Hara Y, Hirano S, Agata N, Shimizu K and Urakawa N (1992) : Inhibitory effects of tiamulin on contractile and electrical responses in isolated thoracic aorta and cardiac muscle of guinea-pigs, J Pharm Pharmacol, 44: 731-736.

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